EXHIBITION
藤井ヨシカツ写真展「Red String」 Yoshikatsu Fujii Photo Ex...
[English text follows below]nagaya paper labは、プレオープニング企画として、藤井ヨシカツによる写真展「Red String」を開催いたします。 本作は2016年以来、約10年ぶりに国内で展示されます。個人的な出来事を起点に制作された本シリーズは、家族という極めて私的な領域を扱いながらも、記憶や関係性の揺らぎを静かに写し出す作品として発表されてきました。 これまで写真集としての展開を中心に発表されてきた本作、あらためて展示というかたちで提示することで、イメージの連なりや空間との関係性が新たに立ち上がります。同時に本展は、藤井にとって自身の制作の原点へと立ち返る機会ともなります。 本展は、nagaya paper labの始まりを示す展示でもあります。アートブック、印刷、製本、そしてコーヒーを軸とし、制作・流通・鑑賞がゆるやかに重なり合う場としてのあり方を模索するこの場所において、「Red String」はその出発点として提示されます。 作家にとっての原点と、場所としての始まりが交差する本展が、イメージと記憶、そしてこれから立ち上がる場の関係を見つめる契機となれば幸いです。 「Red String」 「今日、離婚が成立しました。」いつもはたくさんの絵文字で装飾されて送られてくる母のメールも、その時ばかりはごく簡素に記されただけだった。その時は、ついに来る時が来たのかという思い以外に特別な感情を抱くこともなかったことを覚えている。何しろ両親は長い間家庭内別居を続けていて、その関係は何年もかけて緩やかに坂を下ってきた。両者の間に吹くすきま風は、いつ家族を完全に崩壊させてしまっても不思議ではなかったのだ。日本には昔から「運命的な出会いをする男女は、生まれたときからお互いの小指が目に見えない『赤い糸』で結ばれている」という言い伝えがある。残念ながら両親を結ぶ赤い糸はほどけてしまったのか、切れてしまったのか、そもそも結ばれていなかったのかもしれない。しかし2人の出会いがなければ、私はこの世に生を受けることは無かったのだ。むしろ親子の間にこそ、切っても切れない運命の赤い糸が存在していると言えるのかもしれない。いつしか私は、両親と私との繋がりについて考えるようになった。遠く離れて暮らす両親とあと何日会えるのか。もう会えないかもしれないという焦燥感。次第にその存在は、どうしようもなく気掛かりで仕方のないものとして私の中で膨れ上がり、居ても立っても居られず我が家に何度も通った。ぎこちない会話を交わしながら、ただ目の前にある現実を複写していく毎日。私は2人に合せて動きを変え、2人も私に合わせて形を変える。どちらかが一方的に譲歩するのではなく、互いに歩み寄っていく感覚。たとえ話や思いを共有できたからといって実際に問題は何も解決していないけれど、それで得られる心の変化はとても大きい。 家族が一同に会すことはもう二度とないだろう。しかし私たちが一緒に生きた証は、家族それぞれの中に今でも確かに存在していると感じることができる。そしてこのまま家族を結ぶ赤い糸がバラバラにほどけてしまわないように、私はそれを手繰り寄せ固く結び付けていきたい。 会期 2026年5月2日(土)〜5月10日(日) ※休館 5月6日(水)〜5月8日(金) 時間 13:00〜19:00 会場 nagaya paper lab 〒131-0046 東京都墨田区京島3-13-6 京成曳舟駅A2出口から徒歩5分 東武曳舟駅東口から徒歩11分 ...
藤井ヨシカツ写真展「Red String」 Yoshikatsu Fujii Photo Ex...
[English text follows below]nagaya paper labは、プレオープニング企画として、藤井ヨシカツによる写真展「Red String」を開催いたします。 本作は2016年以来、約10年ぶりに国内で展示されます。個人的な出来事を起点に制作された本シリーズは、家族という極めて私的な領域を扱いながらも、記憶や関係性の揺らぎを静かに写し出す作品として発表されてきました。 これまで写真集としての展開を中心に発表されてきた本作、あらためて展示というかたちで提示することで、イメージの連なりや空間との関係性が新たに立ち上がります。同時に本展は、藤井にとって自身の制作の原点へと立ち返る機会ともなります。 本展は、nagaya paper labの始まりを示す展示でもあります。アートブック、印刷、製本、そしてコーヒーを軸とし、制作・流通・鑑賞がゆるやかに重なり合う場としてのあり方を模索するこの場所において、「Red String」はその出発点として提示されます。 作家にとっての原点と、場所としての始まりが交差する本展が、イメージと記憶、そしてこれから立ち上がる場の関係を見つめる契機となれば幸いです。 「Red String」 「今日、離婚が成立しました。」いつもはたくさんの絵文字で装飾されて送られてくる母のメールも、その時ばかりはごく簡素に記されただけだった。その時は、ついに来る時が来たのかという思い以外に特別な感情を抱くこともなかったことを覚えている。何しろ両親は長い間家庭内別居を続けていて、その関係は何年もかけて緩やかに坂を下ってきた。両者の間に吹くすきま風は、いつ家族を完全に崩壊させてしまっても不思議ではなかったのだ。日本には昔から「運命的な出会いをする男女は、生まれたときからお互いの小指が目に見えない『赤い糸』で結ばれている」という言い伝えがある。残念ながら両親を結ぶ赤い糸はほどけてしまったのか、切れてしまったのか、そもそも結ばれていなかったのかもしれない。しかし2人の出会いがなければ、私はこの世に生を受けることは無かったのだ。むしろ親子の間にこそ、切っても切れない運命の赤い糸が存在していると言えるのかもしれない。いつしか私は、両親と私との繋がりについて考えるようになった。遠く離れて暮らす両親とあと何日会えるのか。もう会えないかもしれないという焦燥感。次第にその存在は、どうしようもなく気掛かりで仕方のないものとして私の中で膨れ上がり、居ても立っても居られず我が家に何度も通った。ぎこちない会話を交わしながら、ただ目の前にある現実を複写していく毎日。私は2人に合せて動きを変え、2人も私に合わせて形を変える。どちらかが一方的に譲歩するのではなく、互いに歩み寄っていく感覚。たとえ話や思いを共有できたからといって実際に問題は何も解決していないけれど、それで得られる心の変化はとても大きい。 家族が一同に会すことはもう二度とないだろう。しかし私たちが一緒に生きた証は、家族それぞれの中に今でも確かに存在していると感じることができる。そしてこのまま家族を結ぶ赤い糸がバラバラにほどけてしまわないように、私はそれを手繰り寄せ固く結び付けていきたい。 会期 2026年5月2日(土)〜5月10日(日) ※休館 5月6日(水)〜5月8日(金) 時間 13:00〜19:00 会場 nagaya paper lab 〒131-0046 東京都墨田区京島3-13-6 京成曳舟駅A2出口から徒歩5分 東武曳舟駅東口から徒歩11分 ...